認定医療法人とはどのような法人ですか?

 認定医療法人とは、経過措置医療法人(出資持分の定めのある医療法人)が、平成26年10月1日から起算して3年を経過する日までの間に出資持分なし医療法人に移行する計画を作成し、その計画について厚生労働大臣の認定を受けた経過措置医療法人のことをいいます。

 医療法人に求められるものとして非営利性の確保があり、医療法54条の剰余金の配当禁止が存在します。しかし、経過措置医療法人の出資持分は財産権であり、出資社員は退職時において出資払戻請求権を有し、当該医療法人が解散する場合は出資者への残余財産の帰属が可能となることから、医療法人の非営利性の確保が危ぶまれています。この非営利性の確保と、安定した医業経営の実現という名のもとに出資持分のない医療法人への移行による認定医療法人と医業承継税制が実現しました。

 認定医療法人化の内容として、次のことを理解する必要があります。

 ・相続・・・相続により出資持分の分割が確定したもので相続人が明確なもの
 ・贈与・・・相続税法9条の「みなし贈与」

 二人以上の出資者がいる場合で、他の出資者が、その出資持分を全部または一部を放棄したことにより、受贈者の意思とは関係なく、降って沸いた経済的利益部分をみなし贈与といいます。すなわち、当事者間の合意のない贈与で認定医療法人の贈与はこのみなし贈与の納税猶予のことをいいます。

 この認定医療法人は、経過措置医療法人が出資持分なしの新医療法人に移行する目的で、中間法人として3年間の時限立法で成立しました。しかし、認定医療法人に移行しても、出資持分なし新医療法人に移行するために知事の認可を受けていない場合、経過措置医療法人へ戻ることが可能であることから、経過措置医療法人の組織変更とはなりません。しかし、認定医療法人として認定されると出資者全員の出資持分を放棄する移行期間、すなわち3年以内の間は納税猶予をするとされています。

 医療法人の定款は医療法54条の9により知事の認可を受けて定款が確定する、いわゆる認可主義です。認定医療法人とは、定款変更について厚生労働大臣の認定を受けた定款のことであり、医療法上当該定款が確定することではありません。よって、認定を受けた定款、すなわち認定医療法人について移行期間内に当該認定医療法人の取下げを申請することにより、認定医療法人の取消処分をうけることとなり、経過措置医療法人に戻ることとなります。
 この取消処分を受けると再度認定医療法人への申請は不可能となりますが、この認定医療法人は、贈与税・相続税について、3年間納税を猶予するために活用することが可能であると考えられます。

 贈与税の納税猶予特例制度は、贈与の時点で既に認定医療法人であることとされ、相続税の納税猶予特例制度は、相続税の申告期限までに認定医療法人となることとされています。
 贈与税の納税猶予は本人以外の者が受贈意思のない経済的利益で、いわゆるみなし贈与に対する贈与税のことをいい、相続税の納税猶予は相続人が承知して受取る経済的利益をいいます。ここで、注意を要するのは、認定医療法人の納税猶予特例制度である移行期間の3年間に他の出資者への一部の払戻しや、出資者が出資持分譲渡をおこなった場合、その時点で納税猶予特例制度は終了するという点です。

 この認定医療法人の認定による贈与税・相続税の納税猶予特例制度を経由して、移行期間3年間に知事による新医療法人として認可を受けた場合は、出資持分に係る贈与税・相続税の納税が免除されます。

 なお、認定医療法人を経由せずに、経過措置医療法人(出資持分あり)から出資持分なしへの直接移行し、知事の認可を受ける組織変更は医療法施行規則30条の39が現存しています。