医療法人の理事長をしており、医療法人の持分を所有しています。持分の評価額が上昇しており、将来の相続税が心配です。持分の評価を引き下げる対策があれば教えてください。

 一般的に、大会社に該当する大規模医療法人の持分評価を下げる効果的な方法は、利益の圧縮です。利益とは、法人税法上のことを指します。

 それによって、特に類似業種比準価額の評価額が下がります。利益圧縮法としては、例えば、適正な役員退職金の支給、病院の大規模な修繕に伴う修繕費支出、含み損のある不動産や有価証券の売却による売却損計上、損金算入される生命保険等の活用等が考えられます。

  医療法人は医療法で配当が禁止されているため、長期間利益が出ている場合は、法人の内部留保が膨らみ、持分評価が高額になって相続税も多額になってしまいます。そこで、計画的に出資持分を後継者に贈与するような対策も効果的になります。

 例えば、以下のような大規模医療法人があるとします。

医療法人社団烏丸会(決算日 3月31日)
課税時期:令和1年6月15日(贈与日)
理事長Aの退職に伴い、退職金6億円を直前期に支給

<状況>
出資金:3,000千円(定款による一口50円当たりの出資口数 60,000口)
出資持分の状況
A・・・50,000口
Aの妻・・・10,000口

直前期の年間取引金額(医業収益)・・・2,100,000千円
直前期末の総資産価額(簿価)・・・1,500,000千円
従業員数・・・200人
直前の年間利益・・・△465,000千円
直前々期の年間利益・・・100,000千円
直前々期の前期の年間利益・・・110,000千円
直前期の利益積立金額・・・732,000千円
直前々期の利益積立金額・・・1,230,000千円
課税時期における純資産価額
 相続税評価額・・・657,000千円
 帳簿価額・・・737,000千円

医療法人の規模の判定
 従業員  70人≦200人 → 大会社に該当する

類似業種比準価額方式の計算
 出資持分1口当たりの面利益金額・・・損失のため0円
 出資持分1口当たりの純資産価額・・・(3,000千円+732,000千円)÷60,000口=12,250円
 類似業種比準価額
  株価は課税月、その前月、その前々月の平均株価、前年1年間の平均株価とその月以前2年間の平均株価のうち、最も低い価額を選択できます。
 276×((0/29+12,250/233)/2)×0.70×50/50=5,077円

純資産価額方式の計算
 (1,420,000千円-763,000千円-0円)/60,000口=10,950円

・類似業種比準価額方式による評価額は5,077円
・純資産価額方式による評価額は10,950円
・いずれか低い方の金額は1口当たり5,077円

Aの出資持分の評価額
 5,077円(1口)×50,000口=253,850,000円