社団たる医療法人の社員とはどのような社員ですか?

 社団医療法人の社員は、社員総会において法人運営の重要事項についての議決権及び選挙権を行使するものです。実際に法人の意思決定に参画できないものが名目的に社員に選任されていることは適正ではありません。

 未成年者でも自分の意思で議決権が行使できる程度の弁別能力を有していれば社員となることができます。

 出資持分の定めがある医療法人の場合、相続等により出資持分の払戻請求権を得た場合であっても、社員としての資格要件を備えていない場合は社員となることはできません。

【1】社員の入社・退社について
 ①社員の入社について社員総会で適正な手続きがなされ承認を得ていること
 ②社員の退社については、定款上の手続きを経ていること
 ③社員の入社及び退社に関する書類は整理保管されていること
 以上のことから社員には出資の義務はなく、また出資をした者が必ず社員になれるものでもありません。すなわち出資持分の定めがある医療法人の場合にあって、たとえ出資持分を有していても、社員となるには社員総会で承認を得た者になります。

【2】社員の資格
 社員について明確な法令上の規定はありませんでしたが、改正法により明確になりました。
(1)社団医療法人の社員の資格
 医療法では44条2項において、医療法人の定款又は寄付行為を作成する場合に必要な事項として、「社団たる医療法人にあっては、社員たる資格の得喪に関する規定」を定めなければならないと規定するほかは明確な法令上の規定はありませんでした。
 その一方で、「東京弁護士会会長宛厚生省健康政策局指導課長回答」において、株式会社が「出資又は寄付によって医療法人に財産を提供する行為は可能であるが、それに伴っての社員としての社員総会における議決権を取得することや役員として医療法人の経営に参画することはできない」とされています。また、平成12年10月5日の東京地裁においても、「医療法は、医療法人の営利性を否定しているのであるから、営利法人が医療法人の意思決定に関与することは、医療法人の非営利性と矛盾するものであって、許されないと解すべき」と判決し、それが最高裁判所でも支持されています。
 これらのことを踏まえ、医療法ほか関係法令において、医療法人の社員資格を明確に定めるとともに、少なくとも営利を目的とする法人が医療法人の社員となることはできないよう措置しました。
 また、社団医療法人の社員の議決権について、社団医療法人への拠出額い応じた議決権割合を社員に付与することは、拠出額の多寡によって社団医療法人の経営が左右され、「営利を目的としない」という考えと矛盾することになります。そもそも社団医療法人い拠出された拠出金の性質は、医療法人の活動を支える財産的基礎です。一方で、社員の議決権は、社員総会において、社団医療法人の適正な運営をチェックするためのものであり、社員一人一人の意思表示が公平になされるための権利です。このため、社団医療法人に拠出された拠出金と社員の議決権とを関連付けることは、「営利を目的としない」医療法人にとって、本質的に相容れません。
 よって、社団医療法人の社員の議決権は拠出額の多寡に関わらず一人一票であることを医療法ほか関係法令において明確に定めることになります。

【3】社員の構成
 社団たる医療法人の社員には、自然人だけでなく法人(営利法人を除く)もなることができることが明確になりました。このことから、社員には、医療法人、社会福祉法人等が就任可能ですが、社員総会への出席者は定款又は社員総会で決議しておく必要があります。