持分なし医療法人への移行により、みなし贈与税が課税される場合、贈与税の計算や申告納税などはどのようになりますか?

【1】贈与税の計算方法
①医療法人の贈与税計算
 贈与税の計算は、医療法人が贈与によって受ける「持分放棄に伴う出資者の権利の消滅に係る経済的利益」の価額相当額から、基礎控除額110万円を控除し、贈与税の累進税率を適用します。

②持分放棄をする社員が複数いる場合の贈与税計算
 持分放棄をする社員が複数いる場合には、医療法人の贈与計算は、「贈与税により取得した財産について、その贈与をした者の異なるごとに、その贈与をした者の各一人のみから財産を取得したものとみなして算出した場合の贈与税額の合計額をもって納付すべき贈与税額とする。」とされています。

例えば、持分なし医療法人へ移行するために、社員の甲・乙・丙の全員が持分を放棄した場合、

<放棄額>
 甲:1億円、 乙:5,000万円、 丙:3,000万円

<贈与税>
 甲:(1億円-110万円)×55%-400万円=5,039.5万円
 乙:(5,000万円-110万円)×55%-400万円=2,289.5万円
 丙:(3,000万円-110万円)×50%-250万円=1,195万円

 合計で贈与税額は、8,524万円となります。

【2】申告納税
 医療法人の贈与税計算は、相続時精算課税制度の適用はできません。したがって、暦年課税制度が適用されます。
 申告納税の期間は、医療法人の決算に関係なく、財産の贈与を受けた年(定款変更の認可日の年)の翌年2月1日から3月15日の期間です。
 また、納税義務者となる医療法人が支払う贈与税額は、法人税の計算では損金不参入とされます。